●学園都市

マルセイユ洋上学園都市

 通称は学園都市。10万学生を擁する巨大学園にして機関都市。
 マルセイユ湾上に存在する人工島であり、要塞の如き防壁に囲まれている。設立は1850年(当時の名称は洋上ガクトゥーン市)。世界全土から自主的に素質ある若者を集めており、優秀な碩学を世界各国へ何人も輩出してきた。
 基本的な修業年数は5年。研究科に進めばさらに4年が加算される。
 設立者不明、運営者不明の、極めて不可思議な洋上施設であり、実質的に学生のみで運営されていたが、1909年4月現在ではフランス政府による運営補助が計画中。
 1908年以前では外部に対して完全に孤立しており、マルセイユからの物資(食料・衣料・その他)を受け取る以外での交流は殆ど行われていなかった。入学したが最後、学生が外に出ることができるのは卒業時のみ、という厳しい管理体制が敷かれていた。現在では以前ほど厳しい封鎖は行われておらず、外部との交流が段階的に進められている。
 学園中央に巨大な機関塔『ディフの塔』と不可思議な尖塔『統治塔』を有し、地下の大機関2基によって島全土の動力を賄っている。ほぼ完全な機関化(自動機械化)が成されている、世界初の自動化機械都市でもある。
 カダス地方の帝国との繋がりを有しており、卒業生にはカダスにおける学位が与えられる。特に成績優秀な卒業生はカダスの碩学位が与えられる。


ウォレス情報網

 別名はシステム・ウォレス。
 近年、北央帝国での実験稼働の後に英国や合衆国などの先進各国で試験的敷設が進められている共通規格のエネルギー/情報ネットワーク。行政情報サービスをはじめとして、生活、経済、娯楽、等々のさまざまな情報の革命的取り扱いと伝達が成されるものと予想され、多くの碩学からは1世紀ぶんの進歩が行われつつあると讃えられている。
 北央帝国帝都にて半年の実験稼働が行われていたが、実に2ヶ月足らずの敷設工事によって大英帝国ロンドンで試験稼働が行われることとなった。1909年現在で本格的な試験稼働が行われているのは、ロンドンをはじめ、パリ、バグダッド、香港、シアトル、シャッガイ──そして、マルセイユ洋上学園都市。
 史実における現代に生きるあなた方であれば、ワールド・ワイド・ウェブや光ケーブルと、それらと同時に併せて敷設される送電線等々を想定すれば、最も近似のイメージを得られるだろう。
 学園都市では1909年4月より試験稼働が始まっている。
 多くの学生たちはこの新たな情報技術に対してすみやかに適応しており、新たな娯楽として見出し、大いに楽しんでいるという。


『薔薇の瞳』事件

 1909年3月に発生した事件。
 学園都市上空に不気味な『瞳』が出現し、統治会直下の治安組織であるはずの治安官部隊が一斉に暴走、10万学生たちを攻撃する事態にまで至った。重武装した治安官たちの暴走によって学園都市各地で建造物が破壊され、多数の怪我人が発生したが、統治会メンバーおよび自警学生たちの活躍によって死者の発生は免れた。
 この事件により治安官全員が試験型の自動機械人形であることが発覚、治安官部隊を設立・導入した人物である統治会《フラタニティ》主宰ウィルヘルム・ライヒは引責辞任を行うこととなった。
(この事件の真相は《結社》総帥代行《黄金王》ローゼンクロイツによる学園都市完全消去計画であり、ニコラ・テスラは人知れずこれに立ち向かい、打ち砕いた。この真相はテスラ本人以外ではネオン・スカラと統治会メンバーのみが知るところである)


全自動学習機関

 学園都市で用いられている教育/学習装置。
 一般的な大教室に1基ずつ配置されており、一度に100〜200人までの学生に対して基礎授業を行うことができる。この装置の発明と導入によって、学園都市は一般教員の大幅削減を実現し、装置で優秀な成績を収めた学生に対して専門の“教師”による高度な教育を行うという革新的な教育方式を成立させている。
 頭部装置(ヘッドセット)を装着し、無意識に近い状態となった学生の頭脳へ知識を送り込むという、最新のメスメル学が応用された装置であり、一種の洗脳装置ではないかという疑問がフランス王国とはじめとする先進各国政府や碩学の間で取りざたされていた。
 現在でもこの装置の使用は続いているが、パリ大学や英国王立碩学院など外部の学術組織による調査・改修が行われ「用途のわからない機能=洗脳と思われる機能」は排除されているという。


全自動授業

 全自動学習機関を用いた授業。
 新入生は毎週木曜日にこの授業を丸一日かけて受けることになる。


通常授業

 自動黒板と呼ばれるメッセージ表記機能つきの機関機械によって行われる授業。授業内容が登録された機関カードを組み込むことで授業内容が時間ごとに表示されていく。
 補助として記録音声の再生を伴うこともあるが、担任教師自身が『一般の学校のように』授業内容を読み聞かせることもある。後者は教師自身の趣味によるところが大きい。


学園校則

 学園都市における校則。
 国家にとっての法律に相当する。違反者には単位減算や独房教室での停学などの処分が行われることになるが、罰則の中に退学の文字は存在していない。
 学園憲章と呼ばれる幾つかの上位校則は、国家における憲法にあたる。
 統治会は『より良い学園を形作るため』と確信する場合に限り、あらゆる校則を自在に書き換える権利を有している。学園憲章でさえも。(1909年4月現在、レディ・ナイチンゲールはこの権利を今後統治会が一切行使しないことを明言した)


学生用機関カード

 個人認証用の機関カード。
 学園都市全土の公的施設、公的な機関機械を使用するのに必要となる。D級以上の優秀学生であれば、使用できる施設や機械、立ち入りできる区域などの制限が一般学生よりも緩和され、重要施設への立ち入りも可能になる。


学園通貨

 学園都市内でやり取りされる通貨はフランス王国で使用されるフランではない。独自に生産された銀貨が用いられている。
 通貨単位の呼称は特にない。銀貨何枚、といった表現となる。
 校則により学園の外の国家通貨は使用できないが、カダス地方の銀貨であれば、公の場でも使用できる。ただし、落第街であれば、ドルやフラン、ポンドなどの学園外の現金が喜ばれる。


映像ラジオ

 学園都市全域に向けて放送されている公共ラジオ放送。
 近年の先進各国で放送の始まったラジオ放送と基本的には同一であるものの、篆刻動画と呼ばれるリアルタイムの映像を音声と併せて放送する最先端技術を試験的に使用している。世界各国で未だ実用されていない技術であり、学園都市の特異かつ優れた先進性を端的に証明している。


教師

 学園都市に存在する数少ない大人たち。
 各クラスの『担任』として学活を担当する他、全自動学習機関で行われた基礎教育の結果として選出された優秀な学生たちへは直接の授業を行うこともある。
 ひとりひとりがカダスの碩学位を有しており、優秀な人材。
 一般的な大学とは異なり、個人的な研究を行っている者はいない。時間のすべてを学生への教育に費やす、という契約を行っているためとされる。


優秀学生

 学園都市における成績優秀学生。
 一定期間内に指定の単位数を所得できた学生に対して自動的に与えられるある種の称号であり、A級からE級までが存在する。優秀学生には、一般学生よりも上質な生活環境や学習環境が供与される。
 最高位はA級だが、極めて優秀な素養ある学生に対しては単位所得実績の有無に関わらず特A級認定を行うことがある。
 統治会メンバーの大半は特A級優秀学生である。


異能(アート)

 別名は《ガクトゥーンの祝福》。
 優秀学生に発現される特殊な能力。特定の条件によって発動する、物理法則さえ無視する超常の力である。何もないところから炎を発生させたり、手も触れずに蒸気自動車を分解したり、空中を歩行したり、等々。詳細及び原理は不明。成績優秀者の中でも選ばれた者へのみ与えられる、学園都市からの祝福であるという。
 統治会メンバーは全員がこれを必ず1つ身に備えていると囁かれている。
 学園に伝わる噂のひとつだが、明確な事実として認識されている。学園の公式記録にもはっきりと記載がある。
 特筆すべきこととして、学生たちの多くが異能の存在を奇異に思うことがない、という不可解なものが挙げられる。学園都市に慣れた上級生だけでなく、入学して数日の新入生に至るまで、異能の存在を耳にしても目にしても……。


異能学生/異能使い

 異能を有する学生の通称。
 1909年4月以降は新たな異能学生の発生は公式には確認されていない。
 あくまで、公式には。


統治会

 学園都市のすべてを統治、支配し、運営する学生組織。
 行政及び立法、そして一部の司法を司る。成績優秀な学生たちで構成されており、メンバーのすべてが教師または臨時講師の資格を有している。本人が望めば研究会や授業の運営を行うことができる。
 1909年現在では男性のみの最優秀学生『フラタニティ』2名と、女性のみの最優秀学生『ソロリティ』3名が並び立つことで統治会は形成されている。
 強権的な支配組織であったが、1909年3月、ソロリティ主宰フロレンス・ナイチンゲールにより「集中しすぎた権力の分割」が提案され、段階的移行が模索されている。


委員会

 学園都市ではあらゆる都市運営が学生たちの手で行われている。
 委員会は、国家で例えるならば行政における各省庁にあたり、学園都市の健全な運営のために日夜それぞれの委員会活動を続けている。校則によれば、統治会から学園運営のための権限や機能の一部を貸し与えられている学生集団、下部組織、という立場である。
 委員会の一般委員は一般学生と立場も変わらないが、委員会幹部や長ともなれば、統治会には及ばないまでも、貴族や大企業幹部のような暮らしが保証される。


部活

 学園都市ではあらゆる都市運営が学生たちの手で行われている。
 商活動についても、学生たちの活動によって運営される。すなわち大小さまざまな部活が企業や商店として機能するのである。それ故に多くの場合、部活施設と言えば『店舗』を指す。
 必ずしも商活動を行い利益を上げる部ばかりではないし、研究のみを続ける部も存在するが、大手部活にはなり難い。
 部員が20名に満たない部活は同好会となり予算枠や単位優遇措置などの各種権利が大幅に制限されることになる。(※思弁的探偵部は部員2名であるのに部活として登録され続けている稀有な存在である)


怪学生(ヴィラン)

 別名は怪人学生。1908年から発生し始めたある種の異能学生たち。
 異能学生の悪事といえば普通、突発的なものか、落第街におけるギャングやマフィアじみた【違反学生:イリーガル】の元締めたちの用心棒じみたものと相場が決まっていたが、1908年6月を境に一部の異能使いたちが『怪学生』を名乗り、著しい校則違反──犯罪を行い、風紀警察を悩ませている。
 彼らの多くは【覆面:マスク】を纏い、仮装めいた姿で学園都市の夜を跋扈する。


自警学生(ヴィジランテ)

 怪学生の発生に対応して登場した、一部の異能学生たち。
 怪学生と同様に、覆面や【衣装:コスチューム】を纏って活動するが、彼らは積極的に校則違反活動を行うことはない。むしろ、風紀警察の通常戦力では太刀打ちできない強力な怪学生たちと敵対し、彼らを風紀に引き渡す。大きな違いである。
 一九〇七年以前より彼らの活動は少数報告されていたが、著しく目撃例が増えたのは一九○八年以降のこと。

●世界

機関(エンジン)

 現代文明すなわち蒸気機関文明の要たる機械。
 あらゆる機械の動力であり、高度な演算を果たす計算機であり、情報処理機械でもある、現在の合衆国における繁栄の要である。
 外燃機関であり、大型であればあるほど出力を増す。
 かつて1690年に発明された動力機械だが、カダス地方ではその遙か以前から存在していたという。


碩学

 あらゆる科学者を指す尊称。
 人類の発展を担う希少な人材であるとされ、人々からは常に尊ばれる。


地球

 あなたの住む世界。惑星名は地球。
 我々の知る惑星としての地球そのものだが、我々の知るものとは差異のある歴史を1822年から歩んでいる。蒸気機関文明の発生により、空と海は灰色に染まった。
 本作の舞台。


フランス王国

 ブルボン第3王朝フランス。
 私たちの知る歴史とは大きく異なり、ナポレオン3世が第2帝政を興すことに失敗し、第2共和制の後にブルボン第3王政が敷かれることとなった。1909年現在は未だ貴族と王族による治世の時代だが、第3共和制の成立を目的とする革命家たち『ル・ブラン』の地下活動が近年活発化している。
 近年、革命を警戒した陸軍のジョゼフ・ジョフル将軍は独断でカダス北央帝国と秘密交渉を行い、強力な兵器技術を入手して新兵器開発と軍備増強を進めている──という噂があり、市民派と目されるアンリ・ヴァラングレー首相との対立はこれを理由としたものではないか、とされている。


大英帝国

 世界最大の国家のひとつ。
 カダス地方との独占外交及び第2次産業革命(機関革命)への積極的な援助によって、蒸気機関文明華やかなりし現代で列強の座に在り続けている。アイルランド、アジア各地、西インド諸島、アフリカ大陸各域と世界各地に属領や属国を有しており、1909年現在でも安定的な維持を継続している。
 1906年まではヴィクトリア女王の治世だった。女王が崩御して後は、エドワード7世が連合王国王を継いでいる。


ドイツ帝国

 別名は帝政ドイツ。プロイセンを中心とした連邦国である。
 蒸気機関技術の発展を国是としており、バーデン=ヴュルテンベルク州の南東全域を大型工業地帯『黒い森』として切り開いた。工業生産力を何よりも重視しているが、大型の機関都市はなぜか有していない。


オスマン機関帝国

 中央アジアを支配する世界最大の国家のひとつ。
 巨大な国家であるものの現在では『斜陽の帝国』と囁かれている。版図は広く東ヨーロッパ領域にまで及んでいたが、前世紀にオーストリアの独立を認めることとなった。全盛期を過ぎた斜陽の帝国であると噂されているものの『大太守の偉大な機械(スルタン・マシーン)』と呼ばれる謎の機関兵器の存在感は健在。列強各国も、オスマン属領各地の独立運動を秘密裏に支援することはあっても、オスマン本国との明確な対立は避けようとする方向にある。


合衆国

 新興国ではあるが、高い技術力と生産力を有する列強国家のひとつ。
 アメリカ合衆国。本シリーズでは合衆国とのみ称される。
 本作の世界では蒸気文明が異常なまでに隆盛な歴史を歩んでいるため、私たちの史実におけるアメリカ合衆国との相違点が多々ある。
 強大な国力を有する列強国家のひとつ。


南部連合

 南北戦争終結後も、本作の世界では南部連合が存在を続けている。
 軍事国家であり、地球における列強国家のひとつである。


カダス地方

 英国の北方海域の彼方に存在するとされる異境。
 地球とは異なる惑星だが、人類が存在する。
 数十年前、異常発達した蒸気文明を世界各国へもたらした。セレナリアと呼ばれることもある。3つの大陸を有し『北央帝国』と『王侯連合』の2大軍事国家に支配された暗灰色の世界である。
 ニューヨークで発生した大災害の原因は、本来はこの異境で数年前に行われ、失敗した、超大型蒸気機関の稼働実験ではないかという噂が一部情報筋で囁かれている。
 シリーズ作品『セレナリア』『インガノック』『ヴァルーシア』の舞台だが、本作の舞台ではない。一部言及があるのみ。


灰色の空

 カダスとの交流及び技術交換が行われた世界各地では、前世紀である19世紀の時点で既に、青空が失われている。カダスへと渡った欧州の碩学たちはあり得ないほどの性能を蒸気機関に与えるすべを見い出し、結果として、世界全土は機関で埋め尽くされることとなった。
 瞬く間に世界各国を埋め尽くした蒸気機関群によって生み出された排煙は空を埋め尽くした。やがて、人々は青空を失い、天には永遠の灰色の空が充ちることとなった。


《結社》

 欧州全土の闇を統べるとされる大組織。
 中世以前から存在する知識の探求を標榜する巨大な秘密結社であり、謎めいた陰謀と計画を張り巡らせて暗躍する超国家間組織であり、あらゆる重大犯罪や策謀に関与しているとさえ囁かれる。その実態へ踏み込もうとした組織や個人はその立場や権力に関わらず悉く不可解な失踪を遂げており、欧州各国の政府組織からは大いに警戒されていると同時に、ある種の畏敬さえ抱かれているという。
 各国の政府機関においては、この巨大組織が学園都市の運営に関わっていることは公然の事実ではあるものの、多くの人々はそれを知らない。学園都市10万の学生についても同じく。ただ、一部の革命学生だけはこの組織の存在を察知しているという。





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